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Nara (奈良)

奈良といえば鹿。「奈良なら鹿しかいない」と奈良行きの車の中で友達とこのおやじギャグを何十回も繰り返して言って遊んでいた。

もちろん奈良ではもっと有名な場所がある。法隆寺はその一つだ。1993年に法隆寺地域の仏教建造物」としてユネスコの世界文化遺産に登録された。日本には世界文化遺産が13しかないので、法隆寺がその一つということで、日本の中ではかなり貴重なものであるはず。

奈良公園付近に入った途端、鹿が道路に突入して車にひかれそうになった。ドキドキ感で歓声を上げては、鹿に引きそうになって悲鳴を上げながら、私たちは注意深く運転していた。駐車して車から降りてから、私たちは思わず鹿の方に走った。鹿せんべいという、鹿のための餌が売店で売られている。何の壁もなく、テーブルの上に置いてあるせんべいは鹿に食べられる気配もなかったが、一旦せんべいを買ったら、鹿はものすごい勢いで手に持っている人に群がってくる。いや、襲ってくるという表現のほうが適切かもしれない。手に持っているせんべいを狙いに、鹿は口をあけながらぶつかってくる。

店に置いてあるせんべいを食べようともしないのに、鹿せんべいを買おうと、お金を財布から出しながら売店に近寄るのを、まるでずっと監視していたかのように、お客様のほうに視線を落とし、鹿せんべいを手にした途端に、鹿は容赦なく追いかけてくる。見た目ではおとなしそうだけど、食べ物が目の前にされたら暴れ出す。鹿は実にずる賢い動物だろうな。

鹿せんべいを手にしている一人の白人の女性に鹿が襲ってくるのを目撃した。悲鳴を上げてせんべいを落としては、一瞬にして鹿に完食された。それをそばから見た日本人のおばあさんはにっこりと笑って、「ごめんね・・」とその外国人に謝った。

まるで自分の子供が他人に迷惑をかけて謝ったかのようだった。確かに、わざわざ自分の国に足を運んだ外国人がもし強盗に合ったら、「私の国の人があなたにこんなことをしてしまって申し訳ありません」と謝るかもしれない。でも、これはもしかしたら日本人の独特な考え方の一つかもしれない。他の国にも起きうるかもしれないけど、日本は特別に「罪悪感」を感じやすい国なのではないだろうか。鹿は動物だといえども、奈良、それから日本の重要な一部分なので、「日本人」扱いされるべきだと。もしかしたら、鹿はそれぐらい奈良の人にとって重要な存在なのかもしれない。自分の子供でもないのに、自分が誇りに思っている「鹿」が他人を攻撃するのはみっともないことである。それに対して謝るしかない。謝るおばあさんはを見て私は思わず笑顔になった。

日本は「恩」や「思いやり」を重視する文化を持つ。この奈良で見た風景はまさにこの日本的な性格を如実に表しているのではないか。私もきっと最初からこんな日本の一面に魅かれて日本が好きになっただろう。この瞬間、私は一瞬初心に戻った。