カテゴリー別アーカイブ: Mie (三重県)

Ise (伊勢)

大学の人類学の先生は8年間ぐらい伊勢神宮で研究が寺働いていたので、授業でよく伊勢神宮の話を聞かせてもらっている。日本にとってどれだけ大事なのか、どれだけ省庁を持っているか、何回も聞くうちに、行きたくなってきた。日本の所謂三種の神器、八咫鏡(やたのかがみ)・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)・天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)の八咫鏡は伊勢神宮の皇大神宮に安置されているそうだ。

伊勢神宮がほかの神社や神宮と違うところはやはり20年に1回行われる「式年遷宮」という大きな祭りである。伊勢神宮のホームページによると、この「式年遷宮」というのは、正殿(しょうでん)をはじめ、御垣内(みかうち)のお建物すべてを新造し、さらに殿内の御装束(おしょうぞく)や神宝を新調して、神儀を新宮へお遷し申し上げる、日本で最も重要なお祭りのひとつだということだ。そんな重要な役割を担ぐ日本の神宮には絶対一度行ってみようと思った。

2009年が終わる寸前の12月30日に友達に誘われて、思わず快諾した。百聞は一見にしかずー伊勢神宮の境内を歩いているだけで、先生の顔と話がどんどん思い浮かんできた。

初詣で賽銭するところまでめちゃくちゃ長い列ができていた。人混みに巻き込んで並んだ。冬の深夜だったので気温が0度ぐらいだった。家を出る前に天気予報をチェックしておけばよかったのに、伊勢市の天気を全く知らずに東京の日ごろに普段着る服(Tシャツと長袖とジャケット)だけで行ったのだ。普段だと人の多さに呆れたはずだろうが、この夜だけは人の多さと温かさほどありがたいことはなかった。

それでも、かなり薄着で来てしまったので、終始一貫体が震えていた。新年早々不吉なことではあるが、並んでいるときに本気で凍死するかと思った。150メートルの距離を移動するのに2時間ぐらいかかった。もう寒くて寒くて初詣する前に倒れてもおかしくなかった。口も動けなくて、足も痺れてきて、全身麻痺状態だった。最後まで賽銭できたのは奇跡だったのかもしれない。

その後、定番の初日の出を見に行こうと近所の高台に登った。これが・・2010年の最後の月の沈みだった。

そして、高いところから見た景色と日の出もとても奇麗だった。太陽が水平線から昇る絶景はもちろん感動するのだが、それに伴う温かさが一刻も凍りかかった体を少しずつ解凍してくれるといいなと、密かに願いながら日の出を待ち構えていた。

地球が1年間かけて太陽を一周回ってきて、新しい一周を回り始める瞬間を目撃できるのは幸せだった、太陽が現れるまで周りの人は楽しくおしゃべりしていたが、最初の光を差し込んだ瞬間から、周りが静まり返った。

数分前は真っ暗だった空が淡々と灯ってきて、楽しい思い出も悲しい思い出も辛い思いでを抱え込んだ2009年がまるでそのすべてを肩から下して歩いて去って行くかのようだった。その後姿を眺める、そこにいた私たちは、お互い知らないのにもかかわらず、みんなそれぞれ自分の過去の1年を振り返っていた。人生は楽しいことばかりではない。でも、辛いことばかりでもない。どんなことがあったとしても、それは2009年が過ぎ去るのと同時にすべて単なる「思い出」になる。

1年間にわたって地球上で起こっているあらゆる出来事―人類がやり遂げたこと、戦争や争い、自然災害などを、太陽がすべて見ていた。そんな太陽が長い旅を経て、あたかもその旅で習った何かとても大切なメッセージを伝えにきたかのようだった。見ている人が黙りこんで耳を澄ませて聞いていた。

夫婦岩(夫婦が寄り添っているように見えることから夫婦岩と名付けられた)